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アメリカが教えてくれたこと
“In God We Trust”
皆さんは、この記述を見たことがありますか?
これは、アメリカの紙幣や硬貨に書かれている表現です。
倒置しているのでわかりにくいですが、”We Trust In God”と並び替えるとその意味が見えてきます。
直訳すれば「我々は神を信じる」ですが、あえて倒置して”In God”が先に来ているということは、よほど「神を」信じることを強調したいと考えることができるでしょう。
これがアメリカという国のモットーになっています。
我々は神を信じる・・・?
さて、日本に置き換えてみましょう。
日本の紙幣や硬貨に「我々は神を信じる」と書かれていたら皆さんどう感じますか?
違和感を感じない人はほとんどいないのではないかと思います。
我々日本人にはそのような共通の認識はありません。
ピルグリム・ファーザーズが信仰の自由を求めて渡った地がアメリカであると歴史として知っていても、あれだけ広くて人口も多いのに「神を信じる」共通認識があるなんて日本人から見たら驚きです。
アメリカが宗教的な国だということはおわかり頂けたと思いますが、ここで一つ疑問が浮かびます。
もし先ほどの例えのように、日本の紙幣や硬貨に「我々は神を信じる」と書かれていたら、何らかの宗教が絡んでいるのではないかと皆さん感じませんか?恐らく感じない人は少ないでしょう。
そうだとしたら、国家と宗教の分離を定めた政教分離に引っかかるように感じる人もいるかもしれません。
特に日本は、戦前に宗教と国が密着して暴走を起こしたことを反省し、国が宗教と関わることを恐れる年配の方々も多いのではないかと思います。
神を信じる=宗教に所属?
しかし、実際はアメリカに国教はありません。一体どういうことでしょうか。
日本には「神」と見ると「宗教」をイメージする傾向が強いと思います。
強調していえば、「神」を信じる人は「何らかの宗教」に属していると思いませんか?
日本人にとって「神」と「宗教」はセットであることがおわかり頂けるのではないでしょうか。
しかしよくよく考えると、「神」が存在するかどうかは「特定の宗教」に属しているかとは別次元の問題です。
「神」が存在しているならば、「無神論者」が圧倒的大多数であったとしても「神」は存在するのであり、「神」が存在しないならば、「宗教者」がどれだけ多く存在しようと「神」はいないことになります。
その辺の感覚が日本人にはあまりありません。皆さんはどう考えますか?
目に見えない宗教的なものを信じるのは宗教者だけというのは日本人の感覚で、宗教とは関係なく神を信じる人も世界には多くいます。
宗教に属していないにも関わらず、宗教的な人もたくさんいる、ということです。
三種類のアメリカ人
3月、私はカリフォルニア州のロサンゼルスに滞在していました。
アメリカには宗教的な人が多く生活する地域も存在しますが、カリフォルニアは全米でも無宗教の人の割合がとても高い地域です。
ここで多くの時間、私は大学生などの若者と行動を共にしましたが、彼らの宗教に対する態度は、大まかに言うと三種類にわかれます。
一つ目は、”Religious Person”。
彼らは「神」を信じ、何らかの宗教に所属し、信仰をもって生きています。
二つ目は、”Agnostic”。
彼らは特定の宗教には所属しておらず、「神」の存在に関してはわからないという立場です。
しかし彼らは目に見えない何らかの力、日本でいうスピリチュアルなものとでも言うのでしょうか、そういったものはあると思う、という態度の人が大多数でした。彼らはそれを”Higher Power”と表現していました。
三つ目は、”Atheist”。
彼らは無神論者です。
- “Religious Person”|神を信じ、宗教に所属
- “Agnostic”|スピリチュアルなものはあると思う、宗教には無所属
- “Atheist”|無神論者
割合でいえば、”Religious Person”、”Agnostic” がほとんどで、”Atheist” はとても少なかったです。
宗教者そのものも確かに多いのですが、アメリカ人は宗教が大切にしてきた目に見えない価値観を大切にしています。
宗教が説く「価値観」「生き方」
宗教は歴史的に、人類のためになる価値観や思想を多く追求してきました。
結果として多くの素晴らしい価値観や生き方を示してきたと私は思っています。
儒教徒じゃなくても、人を思いやることや私利私欲に生きないことは大切だと多くの人が感じています。
キリスト教徒じゃなくても、マザー・テレサの生き方は多くの人に感銘を与えてきました。
私はイスラム教徒ではありませんが、アメリカでは多くのイスラム教徒が私を助けてくれました。
彼らは日本のテレビで見ていたように「排他的」などころか、「寛容で優しい」人たちでした。
科学の時代に求められる人材
AI化の波
2013年に発表された、英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授の雇用に関する論文は、世界中で有名になりました。知っている方も多いのではないでしょうか?
米国の雇用者の47%が今後10~20年後にはコンピュータに仕事をとられてしまうというものです。
この論文が恐ろしいのは、近年の科学技術の発達によって、誰もそれを冗談とは捉えられないことです。
AI化が加速するのは誰の目にも明らかです。
求められる宗教心
こういう時代だからこそ、人間だけが持っているものにスポットライトが当たってくる、そんな気がするのです。
多くの有識者も口々に語っています。(「人工知能時代に磨くべき力とは?」最先端の研究者が語る今後求められるスキル – INDUSTRY CO-CREATION(ICC))
AI化が進んでも機械に代替できない人間の心…それを大切にしてきた宗教の価値をもう一度考え、宗教心を育んでいきたいものです。
(広報担当T)