大学における「カルト対策」は年々その過激さを増し、「カルト対策」の名を借りて行われる信教の自由の制限にもつながるケースが近年非常に多く報告されています。
W-CARP Japanではこのような大学の「カルト対策」の現状を問題視し、今回、大学における「カルト対策」を学術的に批判・分析し、学内における信教の自由の制限であることを立証する論文を募集します。
以下に詳細を掲載いたします。
なお、応募資格は基本的に現役のCARP学生およびスタッフとなっていますが、賛助会員やOBの方でご興味があられる方は当ブログの「お問い合わせ」からご連絡をくださるようお願いします。
大学における「カルト対策」の現状については当ブログでも定期的に報告する他、各大学CARPのブログでも報告されていますのでそちらも御覧ください。
大学における「カルト対策」についての論文募集
1. 募集趣旨
近年、国立・私立を問わず、大学における「カルト対策」が活発化しており、学内における自由なサークル活動ないしは宗教活動の規制が強化されています。こうした「カルト対策」が、特定宗教を信じる学生の人権を侵害し、大学における信教の自由を侵害するものであることを主張し、立証する論文を募集します。
2. 応募資格
① 法学部または法学大学院に在籍中のCARP所属の学生
② 法学部または法学大学院卒のCARPスタッフ
③ その他の自薦・他薦は個別に申請してください。CARP本部が判断します。
3. 分量
12ポイント、A4で10枚以内、文字数にして1万字以内を目安とする
4. 審査員
W-CARP Japan事務局スタッフ、弁護士等(後日発表)
5. 提出期限
2011年10月31日
6. 賞金
最優秀賞10万円
優秀賞5万円
入選3万円
佳作1万円
※どの賞も該当作なしの場合があります。
7. 審査結果の発表
W-CARP Japan公式ウェブサイトおよび公式ブログにおいて発表する。また、入賞者に対してはW-CARP Japan広報渉外局から個別に連絡する。
8. 論文募集主旨
一般に信教の自由には「内心における信仰の自由」「宗教的行為の自由」「宗教的結社の自由」の三つの内容があるといわれている。このうち、「内面の自由」は絶対的な権利であるが、行為の自由は「公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要な」(国際人権規約第18条)制約には従わなければならないとされている。しかし、信教の自由は人権規定全体の根本に関わることなので、こうした制約は、必要不可欠な目的を達成するための最小限度の手段を用いての制約でなければならないとも言われている。大学における「カルト対策」が、こうした必要不可欠で最小限度の制約と言えるのか、それとも信教の自由の侵害に当たるのかを論じることを最も中心的なテーマとする。憲法論や信教の自由を直接扱っても構わないし、それを前提として個々の具体的な問題に絞って論じても構わない。このテーマに関連させて、「カルト」「マインド・コントロール」等の概念を論じても構わないが、あくまで大学におけるカルト対策との関連において論じること。宗教を理由に行われるパワハラ、アカハラもテーマに含まれるものとする。
9. 審査基準
① 主観的な主張のみに終わることなく、客観的・学術的根拠を示すこと。法学部の論文もしくはレポートとして提出しても遜色のないレベルに仕上げること。脚注や参考文献の提示はその基準に従うこと。
② 大学の図書館等を活用して主体的にリサーチを行い、新しい知見の発掘に努めること。下記の参考文献はほんの一部にすぎない。雑誌等の最新の知見を紹介することは高く評価される。
③ 一般的な概念としての「大学のカルト対策」ではなく、具体的にどのようなことが行われているのかを調べ、それに基づいて論じること。自分の大学の例が身近で好ましいが、自分の大学では行われていない場合には他大学の例を扱っても構わない。
④ 実際に学生生活を送っている学生としての視点が入っていることは、評価の対象となる。
⑤ 大学の「カルト対策」を推進する側の主張と論理をよく研究し、それに関して根拠をもって反駁した内容は高く評価される。
10.データの取り扱いについて
提出された論文についての管理は以下の通りです。
①提出された論文はW-CARP Japan事務局が資料として保管するが、本人の希望があった場合は削除する
②入賞した論文については、著作使用権はW-CARP Japan事務局が持つこととし、「大学におけるカルト対策」問題解決のための参考資料として活用される。この場合、本人の希望があった場合も削除は不可とする。
③論文の著作者名および大学名を含む個人情報は、本人の希望に従い公開・非公開を決定する。
④入賞した論文は公式ウェブサイト等に掲載する。
11.備考
大学における「カルト対策」の実態に関しては、各大学CARPの代表(原研代表)が情報を持っているので、直接相談して情報提供を受けること。また、書籍や論文コピーなど、W-CARP Japan事務局に集積されている情報に関しては、要望に応じて提供することが可能である。
参考文献
A.宗教と国家の関係および信教の自由に関する文献
桐ケ谷章、藤田尚則、塩津徹 「信教の自由を考える」 第三文明社 1994年
平野武著 「宗教と法と裁判」 晃洋書房 1996年
(財)国際宗教研究所編 「宗教法人法はどこが問題か」 弘文堂 1996年
田丸徳善・木下義昭 「宗教と政治の接点」 世界日報社 1996年
中野 毅 「宗教の復権―グローバリゼーション・カルト論争・ナショナリズム」 東京堂出版 2002年
藤田尚則 「アメリカ合衆国における『新宗教運動』と『信教の自由』」 『宗教法』第14号 1995年
中島宏 「フランス公法と反セクト法」(以下のサイトからPDFをダウンロード化)
http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/8799/1/hogaku0010303450.pdf大石眞氏 「いわゆるセクトをめぐる法律問題」(以下のサイトから検索してダウンロード化)
http://157.1.40.181/
B.大学における「カルト対策」に関する文献
室生忠 「日本の人権状況」(シリーズ⑫~⑮) 財界にっぽん 2011年3月号~6月号
独立行政法人・日本学生支援機構編 「大学と学生」第85号 2010年9月
内野悌司, 児玉憲一, 中丸澄子, 大下晶子 「破壊的カルトに関与した学生のカウンセリングに関する一考察」
広島大学保健管理センター論文集 2009年
内野悌司、磯部典子、鈴木康之 他 「破壊的カルトの勧誘トラブルに対する介入についての考察」 広島大学保健管理センター論文集 2009年
C.「カルト」「マインド・コントロール」に関する文献
1.教会関係の出版物
増田善彦 『「マインド・コントロール理論」―その虚構の正体』 光言社 1996年
魚谷俊輔 『統一教会の検証』 光言社 1999年
2.外部の学者の文献
島薗進 「マインド・コントロール考」『こころの科学』56、1994年7月
島薗進 「宗教集団への倫理的批判――マインド・コントロールとは異なる言葉で」『中外日報』平成十一年一月一日付
島田裕巳 「宗教とマインド・コントロール」 『季刊AZ』33、一九九四年十一月
渡邉学「“カルト”論への一視点:アメリカのマインド・コントロール論争㊤」『中外日報』平成十年十二月十五日付
渡邉学「“カルト”論への一視点:アメリカのマインド・コントロール論争㊦」『中外日報』平成十年十二月十七日付
櫻井義秀 「オウム真理教現象の記述を巡る一考察」『現代社会学研究』1996年9 北海道社会学会
渡邊太 「洗脳、マインド・コントロールの神話」『新世紀の宗教』宗教社会学の会編、2002年
渡邊太 「カルト信者の救出――統一教会信者の『安住しえない境地』」『年報人間科学』第21号 2000年
3.原理研究会に関する社会学的研究
塩谷政憲 「原理研究会の修練会について」『続・現代社会の実証的研究』 東京教育大学社会学教室 一九七七年
塩谷政憲「宗教運動をめぐる親と子の藤」『真理と創造』24、一九八五年
塩谷政憲「宗教運動への献身をめぐる家族からの離反」森山清美編『近現代における「家」の変質と宗教』 新地書房 一九八六年
4.反対派のマインド・コントロールに関する文献
スティーヴン ハッサン 「マインド・コントロールの恐怖」 恒友出版 1993年
高橋紳吾 『洗脳の心理学』 ごま書房 一九九五年
高橋紳吾 「マインド・コントロールの精神病理」『臨床精神病理』16、一九九五年
西田公昭 『マインド・コントロールとは何か』 紀伊國屋書店 一九九五年
西田公昭 『「信じるこころ」の科学』 サイエンス社 一九九八年
西田公昭 「ビリーフの形成と変化の機制についての研究(3)――カルト・マインド・コントロールにみるビリーフ・システム変容過程――」『社会心理学研究』第九巻第二号 一九九三年
西田公昭 「ビリーフの形成と変化の機制についての研究(4)――カルト・マインド・コントロールにみるビリーフ・システムの強化・維持の分析――」『社会心理学研究』第十一巻第一号 一九九五年
高木総平、内野悌司編 「現代のエスプリNo.490:カルトー心理臨床の視点から」至文堂 2008年
5.統一教会に対する学術的な批判の本
櫻井 義秀、中西 尋子『統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福』 北海道大学出版会 2010年
D.強制改宗に関する本
1. 学術論文
池本桂子、中村雅一 「宗教からの強制脱会プログラムによりPTSDを呈した1症例」『臨床精神医学』第29巻10号 2000年
2. 単行本
米本和広 「我らの不快な隣人」 情報センター出版局 2008年
梶栗 玄太郎編 『 日本収容所列島―いまなお続く統一教会信者への拉致監禁』 賢仁舎 2010年