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【佳作】九州大学における肖像権侵害とハラスメント


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佳作

九州大学における肖像権侵害とハラスメント

K・Mさん&K・Tさん(九州大学)

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1.はじめに

国立大学法人九州大学(以下九州大学という)は、カルトと呼ばれる団体に対してその集団が学内で活動できないように対策を行っている。具体的には、カルト団体勧誘注意の広告物、カルト団体と思われる集団への写真撮影、入学式のカルト勧誘注意などを行っている。九州大学のこれらの行動は学生の権利を侵害しないだろうか。特に、写真撮影は学生の肖像権を侵害する可能性がある。また、最近はアカデミックハラスメントという言葉もあるが九州大学が過度の行動を行うことで学生に不快な思いを与えている可能性もある。

当論文では学生の権利を守るために九州大学が行っているカルト対策について検討する。

2.九州大学におけるカルト対策

①カルト団体と思われる集団の勧誘行為に対する写真撮影

非公認サークルである九州大学CARP(原理研究会)のメンバーが学内で一年生を勧誘しているところで、大学職員が至近距離から無断で写真を撮って行く。撮った写真の使用目的は不明。メンバーたちは4 月~6 月にかけて複数回写真を撮られている。当職員は九州大学学務部学生生活課課外活動支援係の職員である。

②カルト団体メンバーに対する追跡

非公認サークルである九州大学CARP(原理研究会)のメンバーが学内において一年生を勧誘中、大学の男性職員に追跡されることがある。メンバーの中には勧誘行為を終えて食堂で友人と話しているときまで追跡された者もいる。追跡行為を行う職員は写真撮影をしている職員と同一人物。

③勧誘された一年生への個別の注意喚起

非公認サークルが学内で一年生を勧誘した後、一人になった一年生に大学職員が近づき「勧誘してくるサークルの中には怪しいサークルもある。あのサークルも怪しいところかもしれないから気を付けるように」と直接声をかけ注意を促す。主に4 月の新歓期に行われる。

④カルト集団勧誘に対する広告物

九州大学伊都キャンパスのカルト対策関連の掲示物は4 種類計28 枚、箱崎キャンパスの同掲示物は伊都キャンパスと同じものを含めて3 種類9 枚、両キャンパス合わせて5 種類37枚のカルト対策関連ビラが貼られている。それらは主に掲示板ではなく建物の壁や柱に貼られている。以下に最も多く貼られているビラについて例を示す。

「怪しげな勧誘に注意!!」という題名が赤い字で書かれたA4 サイズのビラは2009 年度の後期から張り出され、現在もセンターゾーンおよび伊都図書館や中央図書館の入口に計14 枚ほど貼られている。ビラの内容は以下のとおりである。「怪しげな勧誘に注意!!大切な学生生活をフイにしないために。興味のないものははっきり断ろう。個人情報を簡単に教えないように。署名なども注意してください。『おかしいな』『怪しいな』と感じたら、すぐに大学に相談してください。『この集団から抜け出したい…』と思ったらどんな状況でも大学に相談してください。友達が係わっている、何か勧誘されている、そのような状況があれば、すぐに大学に連絡してください。連絡先:学生生活課092-802-5969」

⑤入学式におけるカルト集団に対する勧誘対策

九州大学では平成22 年、23 年、24 年度の入学式で新入生に対してカルト対策のオリエンテーションを行った。平成23 年の例を挙げると、入学式後に、新入生に対して丸野俊一副学長からカルトの勧誘への注意喚起が行われた。さらに、翌日の学生生活オリエンテーションでは日本司法支援センターの佐藤力弁護士が「宗教団体の勧誘に注意するように」という主旨の講話を40分ほど行った。講話では、オウム真理教の例をあげながら、「宗教は本当に恐ろしい」と述べていた。また、教育学部の新入生オリエンテーションでは橋口教授(仮名)が統一教会の勧誘に注意するように促した。これは橋口教授の個人的な意見であり大学当局が行うカルト対策ではないがこのような発言を容認していることに対する責任は大学当局にもあるといえる。

3.学生の証言

今回は特に、職員が行った写真撮影と追跡行為について学生の証言をもとに肖像権の侵害となるのか。ハラスメントに該当するのかを検討する。

①カルト団体と思われる集団への写真撮影

(a)2年女子生徒の場合

九州大学CARP(原理研究会)のメンバー(2 年女子)の証言では、学内で一年生を勧誘しているところを大学職員に写真を撮られたという。写真を撮られたのは2012 年6 月5 日。新歓期を過ぎ一年生を勧誘するサークルも少なくなってきた時期である。夕方の図書館前で彼女が同じCARP の先輩と二人で一年生を勧誘していたところ、デジカメを持った男性職員に写真をとられたという。肖像権を侵害されたと感じた彼女は勇気を出して男性職員に話しかけ、「さっき写真撮りましたよね?」と問い詰めたが職員は「撮ってない」の一点張りだった。「私は無断で写真を撮られ肖像権を侵害されたと感じた。撮った写真は今すぐ削除してほしい。写真を撮ってないというのなら撮ってないという証拠を見せてほしい。」とデジカメのデータを一部見せてくれるよう願い出たが職員は「デジカメなんて持っていない。パンフレットに使う風景を撮っていただけだ」という言葉を発し学生支援課へと帰って行った。写真を撮られたメンバーは「男性に無断で写真を撮られたことが非常に怖かった。なんのために撮られたのかわからず、男性職員の不誠実な対応にも怒りを感じた。また、写真を悪用されるのではないかと不安になった。」という感想を述べている。その男性職員は学務部学生生活課課外活動支援係の職員ということがわかっている。

後日、九州大学CARP(原理研究会)の代表(4 年男子)が学生生活課の窓口に行き写真を撮ったと思われる男性職員に直接話を聞いた。当職員は学内案内の編集委員もしているため学内風景の写真をとる必要がある。あの時はあくまで風景を撮っていたのであり女子学生を撮っていたわけではない。またデジカメは私物なのでプライバシーを守る権利があるからデータは見せられないという。さきの女子学生は「盗撮された」「セクハラ」されたと感じていると伝えたところ、専門家ではない君に判断できることではないだろうと言われた。ではハラスメントの専門家に相談すればいいのですかと聞くと、それはだめだと言われた。

(b)3年男子生徒の場合

4月中、様々なサークルが新規勧誘を行っている時期、九州大学センターゾーン一号館と掲示板の間で男子学生が一年生を勧誘していると、職員が男子生徒に距離3メートルのところまで接近し写真を撮り始めたという。男子生徒は顔をとられないように向きを変えたが、職員も移動して横顔の写真を何度も撮影した。そして、職員は男子学生と一年生の会話が終わるまで待ち、男子学生と別れ一人になった一年生に近づき「非公認サークルの中には怪しいものもある。あのサークルも怪しいかもしれないから気を付けて」と注意を促した。後に男子生徒は、「写真撮影と個別の注意喚起を通して、職員が意図的に自分たちの勧誘の邪魔をしていると思うと腹が立った。至近距離から無断で、写真を撮られたことで肖像権が侵害されたと感じた。また、自分たちのサークルは職員から怪しいと思われているということがわかり、撮られた写真が悪用されるかもしれないと思うと不安になった。

翌々日の授業でいきなり自分の名前が呼ばれて、もしかしたら裏で職員が写真を使って自分をマークしているのではないかとまで考えてしまい怖かった。」とも語っている。

(c)2 年女子学生の場合

女子学生が学内で一年生を勧誘しているところに大学職員が現れ勧誘が終わるまで近くをうろうろしていた。女子学生が勧誘を終えて個人的な用事で掲示板を見に行くとその職員もついてきた。後をつけられていることに気づき怖くなった女子学生はビッグサンド内の食堂に入ったが、そこにも職員はついてきたという。女子学生が友人と会い話をしている最中も職員は近くをうろうろしていた。いよいよ怖くなった女子学生は食堂から200 メートルほど先にある図書館に歩いていった。職員もそこまではついてこなかったという。

4.肖像権

上記の対策のうち写真撮影が学生の肖像権を侵害する可能性がある。肖像権とは、自己の容貌・姿態をみだりに撮影されない権利である。

肖像権は憲法に明記されているわけでない。しかし、憲法13条後段に「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とある。この規定は個人の人権保障規定ではカバーしきれない新しい人権侵害態様に対応するための包括的な人権保障を規定したものである。

しかし、人権を無制限に認めると人権問題が大量発生して、人権の価値が相対的に低下するため、憲法13条後段は人格的生存に必要不可欠な権利・自由のみを人権として保障したものと解釈する。そして、現代の情報化社会においては、容貌・姿態の撮影を自由に許すと、インターネット上に画像が提示されるなどして平穏な生活が害される恐れがある。

そのため、自己の容貌・姿態をみだりに撮影されない権利は人格的生存に必要不可欠な権利といえる。

よって、自己の容貌・姿態をみだりに撮影されない権利は、憲法13条後段により保障されると解する。1

5.検討

偶然とった写真の中に人が写っていただけで憲法に違反したとなると、写真を撮った人にとって酷である。それでは、どのような場合違法となるのだろうか。最高裁の判例2では、「人はみだりに自己の容貌、姿態を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有し、ある者の容貌、姿態を承諾なく撮影することが不法行為上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の人格的利益の侵害が社会生活上受任すべき限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである」とある。

1 最高裁(昭和44年12月24日)も正当な理由なく自己の容貌・姿態をみだりに撮影されない自由を憲法13条が保障することを認めている。2 平成17年11月10日
写真週刊誌のカメラマンが刑事事件の法廷において被疑者の容貌、姿態を撮影した行為が不法行為上の違法とされた事例である。

今回の九州大学の教職員による写真撮影もこの判例の基準に照らして判断する。つまり、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影内容、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、生徒の人格的利益の侵害が社会生活上受任すべき限度を超えるものといえるかどうかを判断する。

(a)2年女子生徒のケース

本件では、撮影をしたと思われる職員に対して、学生が写真をとったのか確認した際に職員はとってないと発言しているが、さらに学生が撮影に使ったデジカメを見せてほしいと問い詰めると「デジカメは持っていない。パンフレットにのせる風景を撮っていただけだ」と発言した。職員が職務中に学内で写真を撮っているならば、私的な写真撮影でなく、公的な写真撮影であると推測できる。公的なパンフレットに載せる写真ならば、学生が撮影されたとしても学生の権利を侵害したことにはならない。しかし、パンフレットに載せる風景の写真ならば、いずれ公開する写真であるため、学生から見せてほしいと言われたときに拒む理由はなく、矛盾した発言を行い不誠実な対応をとる必要もない。そのため、職員はパンフレットの風景の写真を撮っていたのでなく、勧誘活動を行う学生の写真を撮っていた可能性がある。

職員が勧誘活動をする学生の写真撮影をしたとすると、職員は学生に無断で写真撮影を行っている。このとき行った写真撮影は学生の人格的利益の侵害し、社会生活上受任すべき限度を超えているといえるだろうか。

撮影の態度として、職員は学生に対して承諾を取ることなく勝手に撮影を行った。大学という巨大機関が学生個人を狙って撮影することで、学生は評価を下げられたりするのでないかという恐怖心が生じる。女子生徒も「写真を悪用されるのではないかと不安になった」と語っている。そして、教職員側は何らかの目的があって撮影するならば、一言撮影の許可を学生に取るべきであったにもかかわらず、黙って撮影を行っている。

それだけでなく、職員は学生の写真撮影を行った際に、矛盾した発言を行い不誠実な対応をとっている。無断で写真を撮られたことだけでなく、不誠実な対応を受けることで学生の不安や怒りは増大すると考えられる。学生も「不誠実な対応にいかりを感じた」と発言している。

パンフレットの撮影ならば、職員の写真撮影の必要性は当然存在する。しかし、上述したように職員は勧誘活動を行っていた学生を撮影したとすると、目的を隠してまで、写真撮影をする必要があったのかは疑問である。

また撮影内容として、勧誘行為をしている学生の写真撮影をすることで、何に使われるかわからない恐怖心や勧誘活動のたびに繰り返し無断で撮影されるのではないかという思いを与え学生の勧誘活動を萎縮させている可能性もある。

これらを総合考慮すると、職員の撮影は学生を恐怖させ、サークル活動を萎縮させる行為として、学生の社会上受任すべき限度を超え人格的利益を侵害した行為であるといえる。

ゆえに、職員の写真撮影はみだりに自己の容貌・姿態を撮影されない権利を侵害したとして違憲である。

(b)男子生徒のケース

次に、男子生徒のケースでは、社会上受任すべき限度を超え人格的利益を侵害した行為であるといえるか。女子生徒との基準と同様の基準で判断する。

今回も九州大学の教職員が学生に対して、写真撮影を行った。今回は、男子生徒が写真を撮られないように移動した後にも、移動して写真撮影をしていることから、偶然撮影が行われたのでなく、明らかに男子生徒を狙った撮影である。そして、職員は学生に対して承諾を取ることなく無断で撮影を行った。大学という巨大機関が学生個人を狙って撮影することで、学生は評価を下げられたりするのでないかという恐怖心が生じる。男子生徒も「裏で何に使われるかわからずに不安になった」と述べている。そして、教職員側は何らかの目的があって撮影するならば、一言撮影の許可を学生に取るべきであったにもかかわらず、黙って撮影を行っている。また、職員が何度も撮影するという態度も学生の不安を増大させる。

また撮影内容として、勧誘行為をしている学生の写真撮影をすることで、何に使われるかわからない恐怖心や勧誘活動のたびに繰り返し無断で撮影されるのではないかという思いを与え学生の勧誘活動を萎縮させている可能性もある。

勧誘している学生を撮影する必要性はあるだろうか。4月期は、学生の積極的な勧誘活動に乗じて学外の団体も入ってくる。それを防止するために、写真撮影をする必要性が出てくるかもしれない。しかし、職員が個別に注意するという方法もあるため、みだりに写真撮影を行う必要性はない。

このように、本件写真撮影は、学生に恐怖心を与え、萎縮効果をもたらすため、学生の社会上受任すべき限度を超え人格的利益を侵害した行為であるといえる。よって、本件撮影は、自己の容貌・姿態をみだりに撮影されない権利を侵害した行為であるといえるため、違憲であるといえる。

6.ハラスメント

ハラスメントとは他者を不快にさせる言動による人格侵害行為である。たとえ一つ一つの行為はハラスメントというほどなくても、それが連続、あるいは継続することで、ハラスメントと言える場合がある。一方、行為がすべて直ちにハラスメントに該当するわけでなく、教員が学生の指導の一貫として行った言動については、その対象となった学生が不満に思ったり、精神的に落ち込んだりしても、客観的にみて正当な指導上の行為とみなされる場合もある。

特に性的な嫌がらせをセクシャル・ハラスメントと呼び、職場、学内で判例3も多く存在し、3 大学においてセクハラ問題が登場したのは京都大学の矢野事件(京都地裁平成9年3月27日)からである。

対策も進んでいる。また最近、教職員が学生にその地位を利用してハラスメントを行うアカデミックハラスメント、パワーハラスメントも裁判で扱われるようになった。4そして近年、アカデミックハラスメント、パワーハラスメントを防止しようという動きがでてきた。

それが、各大学で作成されているハラスメント規程やガイドラインである。今回は九州大学が定める国立大学法人九州大学ハラスメント防止規程(以下ハラスメント規程)に照らして事例を検討する。

ハラスメント規程の第一条では、「国立大学法人九州大学に勤務する職員及び役員(以下「職員等」という)並びに学生、聴講生、研究生(以下「学生等」という)及びその他本学において研究等に従事する者のハラスメント(セクシャル・ハラスメント及びこれに類する人としての尊厳を侵害する行為という)の防止及び排除のための措置並びにこれらに起因する問題が生じた場合に適切に対応するための措置に関し、必要な事項を定め」ている。

「セクシャル・ハラスメント」とは職員等が他の職員等、学生等及び関係者を不快にさせる性的な言動及び学生等又は関係者が職員等及び学生等を不快にさせる性的言動{ハラスメント規程第2条(1)}のことである。

「これに類する人としての尊厳を侵害する行為」とは、上下若しくは力関係を利用して、又は一方的な思いこみ等に基づいて、職員等が他の職員等、学生等及び関係者を不快にさせる不当な言動並び学生等又は関係者が職員等及び学生等を不快にさせる不当な言動{ハラスメント規程第2条(2)}である。

「これらに起因する問題」とはハラスメントのため職員等の就労上又は学生等の修学上の環境が害されること及びハラスメントの対応に起因して職員等が就労上又は学生等が修学上の不利益を受けること{ハラスメント規程第2条(3)}である。

7.検討

大学職員が行った写真撮影と追跡活動は「ハラスメントに類する人としての尊厳を侵害する行為」に該当しないだろうか。

まず、大学職員と学生は就学上どのような関係にあるのか。大学職員は学生の支援者として、学生が学業に集中できるように環境支援を行えるが、大学の一部の機関であるため、学生個人と比べ、大きな権力を所持している。そのため、大学職員は学生に優越した力関係にある。

(a)女子学生のケース

一般に、見ず知らずの他人に自分の顔写真を無断で撮られることに対して嫌悪感や不安感を覚えるのは当然のことと言える。しかし本件の場合、撮影された場所は大学のキャンパス内であり、撮影者は大学職員、被撮影者は学生であるため、当職員が弁明しているように大学パンフレットを作成するため学内風景を撮っていたと推測でき、被撮影者である女子学生の「写真を撮られたことに非常に恐怖を感じた」というのは彼女の過剰反応であるといえなくもない。ここで、学内で職員から写真撮影をされたという点だけを考えればそのこと自体に非常に恐怖を感じたというのは不自然であるともいえる。しかし無断で写真を撮られ肖像権を侵害されたと主張する女子学生への職員の対応を見てみると、謝罪の一言もないばかりか「デジカメは持っていない。パンフレット作成のための風景を撮っていただけだ」という矛盾した発言を残して帰るという極めて不誠実な対応であった。後日、当職員は「学内案内の編集委員をしているため学内風景を撮る必要があった。個人のデジカメで写真を撮っていたので私のプライバシーを守るためデータを見せることはできなかった。」と述べている。女子学生はデジカメのすべてのデータを見せてほしいとは言っておらず「職員が女子学生の写真を撮っていないという証拠」としてデータの一部の閲覧を求めたに過ぎない。もし職員が自身の証言通り学内風景を撮っていただけならその時撮った風景写真を見せればよい。そうすれば職員のプライバシーは守りつつ誤解を解くことができた。しかし実際はデータを見せることなく女子学生の誤解を招くような紛らわしい行動をしたことに対して謝罪の一言もなかった。この点を考慮すれば、当職員の「パンフレット作成の為に風景を撮っていた」という発言は嘘であり、他の目的の為に顔写真を撮られたのではないかと女子学生が考えても不思議ではない。女子学生がこのことに非常に恐怖を感じたというのも頷ける。ここで、当職員は撮った写真の使用目的を隠すために「学生案内編集員」という地位を利用している。これらの事実と九州大学ハラスメント防止規定の第二条(2)を照らしてみると、当職員が学内案内編集委員という地位を不当に利用し使用目的不明な写真を撮ることによって女子学生に恐怖を与えたこと、さらにその後の対応が虚偽を含む不誠実なものであったことから本件は当職員による女子学生へのハラスメントであるとみなすことが出来る。

4 松山地裁平成19年度2月22日愛媛大学は教授が自身の研究室で学ぶ大学院生に「希望とことなる研究テーマを強要したなどとして停職3カ月の懲戒処分を行った。同教授は懲戒処分の無効確認を裁判で求めたが、請求は棄却された。アカデミックハラスメントについての大学の処分が裁判で認められた事例。

(b)3 年男子生徒の場合

職員は男子学生に断りを入れることもなく至近距離から写真を撮っている。男子学生が拒絶の意味を込めて背を向けたにも関わらず、横に回り込み何度も写真を撮っている。さらに職員は、男子学生と別れ一人になった一年生に「あそこは怪しい団体かもしれないから気を付けて」と注意を促していることから、当職員が男子学生の所属する団体を怪しいと考え男子学生の勧誘行為に干渉する目的で写真を撮っていたことは明らかである。男子学生は勧誘を妨害されたことに苛立ちを覚えている。よって職員の行動は九州大学ハラスメント規定第二条(2)の「学生等を不快にさせる不当な言動」であるといえる。また、男子学生は一年生とのメールのやり取りから職員による個別注意喚起の具体的内容を知った。

大学職員が自分たちを怪しい団体とみなしていることが事実なら、至近距離から撮られた自分の顔写真が他の職員にもまわり大学中の職員から監視されるのではないかと考えるようになった。実際、翌々日の授業では教授から名前を呼ばれただけでこの教授も自分をマークしているのではないかという恐怖を感じ授業に集中できていない。これは九州大学ハラスメント規定第2 条(3)の「修学上の環境を害する」にあたると言える。

以上のように、今回は両事例とも、ハラスメントに該当すると認められるため、「処分又は、就労、修学、教育若しくは研究環境の改善を行うことが必要であると判断される場合は、総長は、必要な措置を講じるものとする」(ハラスメント規程10条)とあるように、必要な措置が講じられるべきである。

<参考文献>
・ 『アカデミック・ハラスメント対策の本格展開』井口博/吉武清寛
・ 『大学と法』永井憲一・中村睦男


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